次世代レーザー材料開発と応用に関する研究
担当:筑本知子
次世代レーザー材料開発、磁気光学イメージングによる磁場分布可視化、文化財研究、超伝導送電システムに関する研究など
材料・応用技術グループは2024年度からスタートしたグループです。次世代パワーレーザー応用に向けた高寿命レーザー材料等の開発の他、磁気光学イメージング法による超伝導材料、磁性材料等の電流・磁場分布可視化測定、レーザー分光法等を用いた文化財研究、超伝導導体開発など、多岐にわたる研究を、レーザー科学研究所の他研究室をはじめ学外の研究期間、企業等との協力体制の下進めているところです。
次世代レーザー材料開発
パワーレーザーはレーザーフュージョン、加工等様々な応用開発がすすめられていますが、応用の鍵を握るのがレーザー材料の高寿命化です。特にこれらの応用に必要な高繰り返しレーザー発振を行うためには、レーザー材料の高熱伝導化が必要不可欠です。そこで、本研究においては、軽元素の微量置換等の手法により、従来より優れた熱伝導特性を有する材料探索を行います。
磁気光学イメージングによる磁場分布可視化
磁気光学イメージング(Magneto-Optical Imaging, 以降MOIと略記)法は、磁気光学効果の一つであるFaraday効果を利用して、磁束密度分布を光学的に観察する方法です。図1にMOI法の原理図を示します。Faraday効果は、磁性材料の中を光が進むときに、磁性体の磁化方向の向きに応じて光の偏光面が回転する現象で、回転角(Faraday回転角𝜃𝐹)は光の波動ベクトルkと磁化ベクトルMのスカラー積に比例します。ここでMOインディケーター膜(MOI膜)として面内に磁化容易軸をもつ面内磁化膜を用いると、𝜃𝐹が磁性体に垂直な磁場に対して連続的に変化するため、入射側と検光子側に2枚の偏光板をクロスニコル配置することによって、磁場強度を光の強度の変化として測定することが可能となります。図2はこの方法を用いて、超伝導材料の磁場分布を測定し、その磁場分布から電流分布を計算した例です。このように、MOI法は磁場分布や電流分布の可視化が可能な方法であり、これを用いて、超伝導材料や磁性材料の磁場や電流特性の探究を行います。
レーザー分光法等を用いた文化財研究
レーザー科学研究所は附属マトリクスセンターを中心として学際連携研究をすすめています。レーザー分光法等の非破壊分析法を手掛かりに陶磁器をはじめとして様々な文化財のルーツを探る研究をレーザー研内の共同研究グループと大阪大学人文学研究科や複数の研究機関との連携によりすすめています。
超伝導送電システムに関する研究
高温超伝導を利用した直流送電は、原理的に大電流を低損失でコンパクトに送 電できることから、炭酸ガス排出削減の他、送電ケーブルのコンパクト化による環境破壊の低減や省資源化等が期待され、カーボンニュートラルの実現にも大いに貢献できる技術です。本研究では長距離システムの実現に欠かせないケーブル接続技術について、常温拡散接合技術をテーマに研究をおこなっています。